世界一と言われることもあるオランダの教育。
今回はオランダと日本の教育システムの違いに目を向け、項目別にまとめました。
重複する部分もありますが、オランダの教育制度の全体像を把握できるようになっています。
*初等教育と中等教育がメインの内容となります。
義務教育期間は5歳〜18歳(16歳〜は部分的)
オランダと日本の教育制度を表にまとめました。
左側がオランダ、右側が日本です。オランダでは小学校が終わり12歳からは3つの進路に分かれるのが特徴的です。
義務教育期間は、日本は小学校が始まる6歳〜中学卒業の15歳までです。
一方オランダは、5歳〜18歳(16-18歳は部分的に)が義務教育期間です。日本より最長4年も長い期間が義務教育になります。
オランダ | 日本 | |
義務教育期間 | 5〜18歳(16歳以降は部分的に) *中等教育のディプロマを取得すればその歳で終了 *もしくは18歳に達するまで | 6〜15歳 |
16歳〜18歳と幅があるのは、中等教育からは学校に通う年数や進路が人それぞれ異なるからです。18歳より前でもディプロマを取得すれば義務教育は終了になります。
小学1年生は4歳からスタート、4歳は任意参加
オランダは5歳からが義務教育ですが、その1歳前の4歳からも小学校に入学が可能です。
義務ではありませんが、就学前の準備として学校に慣れるために入る子が多いです。もちろん5歳から入っても問題ありません。
4歳の誕生日が来てから5歳までの1年間、準備期間があるのが日本と違います。
そしてもう一つ驚くのが、4歳の誕生日の翌日から学校に通えることです。日本のように4月に一斉入学のような仕組みがありません。入学式も無いので、小学1年生の(4歳)クラスは徐々に子どもが増えていくことになります。
オランダ | 日本 | |
小学生はいつから? | ・4歳から入学できる(任意) ・5歳からは義務教育(必須) | 全員6歳から義務教育(必須) |
この辺りは日本に住む私には不思議な感覚です。しかし影響があるのは子どもが未就学児や4歳前後の場合です。学校に入る時期を各家庭で決めなければなりません。それ以上の5歳以降はどちらにしろ義務教育で、学校に通うことになるので時期を悩む必要はありません。
日本人が驚く、落第も飛び級も普通なオランダ
飛び級は良くても落第は「え?」と思ってしまいそう…
しかしオランダの学校は飛び級もあれば落第も当たり前の国です。
オランダ | 日本 | |
落第 飛び級 | クラスの10%程度いるのが当たり前 | ほぼなし(聞いたことがありません) |
話を伺ったご家庭のお子さんが通う小学校では、学年の10%が飛び級で一つ上の学年に、そして10%が落第で一つ下の学年に行ったそうです。上の学年にも下の学年にも行き、確率的に同じくらいになるのは納得できると思いました。
オランダの学校は子ども一人一人の発達や成長の違いを大切にした教育が行われます。そのため、学習が追いついていない、理解していないなら、もう一度学んで分かるようになってから次に進む方が良いと考えられています。結局その方がその子のためになるからです。
理解しないまま進級したら、次はもっとわからなくなり出来ないループに陥ってしまいます。落第は繰り返し学べる機会です。学校が子ども一人一人の成長を見て、それ自体を大事にしている証でもあります。
かといって、飛び級も落第も学校側から一方的に押し付けられることはありません。学校と生徒と親の話し合いの後に決定されます。
考えてみれば習い事のプールやピアノなどは年齢に関係なくその子のレベルに合わせて上のクラスにあがります。しかし学校教育だけは(日本の場合)どんなに学習が進んでいても遅れていても同じ学年で進級をします。学校の運営や仕組みにとっては都合が良いかもしれませんが、子どもにとっては良いものとは言えません。
落第と飛び級がある教育が子どもにもたらすメリットは、それ以外にもあります。小さな頃から年齢をまたいだ生徒がクラスに存在し、発達レベルや学習レベルが様々なことを知ります。そんな社会を当たり前として経験することで、誰に対しても尊重し、尊重される側も自己を肯定されるのです。オランダはユニセフの子ども幸福度ランキングで毎回上位入りします。この飛び級と落第のシステムが子供たちの心にも影響しているように思います。
学区制が無い。人気校は抽選になる
日本は学区制があります。
先日、日本の我が家には「あなたのお子さんが入学する、通学区域の学校は〇〇小学校です。」という通知が届きました。学校選択制度が導入されてはいますが、どこでも希望を出せるわけではなく、申請を出せる学校も限られています。
オランダ | 日本 | |
学区制 | なし | あり |
オランダには学区制がそもそもありません。定員が空いていれば希望校に行くことができます。
人気校は抽選です。
これは裏を返せば、親子自らが行く学校を決めなければなりません。日本は高校から進路校を決める場合が多いですが、オランダでは小学校から学校の選択をしなければなりません。
居住エリアから通える距離の学校、いくつかに見学に行きそれから決定する方が多いです。
自らが選択した希望の学校に入るので、親の学校行事参加もとても活発だそうです。子どもの社会科見学に親数人が自宅の車を出す(運転手 兼 付き添い)というようなことも当たり前にやっているそうです。
*まれに入学する子どもを選別している学校もあります。必ずしも希望の学校に入れるわけではないので注意してください。
義務教育期間は 学費は無料
日本よりも義務教育期間が長いオランダですが、この義務教育の期間は学費は無料です。
なんと、公立、私立ともに基本的に学費が無料です。私立でも無料なのは驚きます。
オランダと言えば有名な、モンテッソーリもイエナプランの学校も「無料」です。学区制も無いので、広い選択肢から選べるのはとても魅力的。
家庭の収入で学校の選択肢が狭まることがないのは、子どもにとってメリットは大きいです。
子連れでオランダに住む際に気になることの一つが教育です。
・良い教育を受けれるのか?
・学費は払えるのか?
オランダはなんと公立、私立ともに無料で、教育の質も高いです。このことから移住先をオランダに決めるご家庭も多いようです。しかし知っておきたいのは授業はオランダ語で行われます。英語ではないのでそこは検討した上で決める必要があります。
学費無料の例外は、インターナショナルスクールと日本人学校です。
インターナショナルスクールと日本人学校は学費がかかります。
オランダ | 日本 | |
学費 | 無料(公立、私立) 有料(インターナショナル・日本人学校) | 無料(公立) 有料(私立・インターナショナル) |
初等教育(5〜12歳)は親の送り迎えが必須
小学生は、親が子どもの送り迎えをする必要があります。日本のように小学生になったら一人で登下校〜というのはオランダではありえません。
海外に出てみるとわかるのですが、そのくらいの年齢の子が一人で通学する方が珍しいです。
行きも帰りも(お昼も)学校までの送迎が必要です。
なるべく自宅近くの小学校に通う。
オランダの小学校を決める際に大事にしたいことです。
オランダ在住の方に学校を決める際にアドバイスをいただきました。
雨の日や寒い冬の日も通うこと。水曜日は午前中で帰宅することも想し学校との往復で1日が終わってしまった。。なんてことの無いよう、小学校選びは慎重に行う必要があります。
自転車大国のオランダですが、雨は多いし冬は日照時間も短く本当に寒いです><
給食が無いので軽食を持参 または購入 または自宅へ
日本が圧倒的に誇る「給食」システム。これは本当にありがたい仕組みで、栄養バランスが取れた温かいメニューを毎日食べれるなんて!素晴らしすぎます。
残念ながらオランダには給食がありません。
選択肢は3つ。自宅から軽食を持参、学校近くの売店で買う、または一度自宅に戻ってお昼を食べる、です。
オランダ | 日本 | |
お昼 | ・軽食持参(パン、ハム、りんご、バナナなど) ・売店で購入(軽食、フリットなど) ・自宅に戻って食べる | すばらしい!給食 |
軽食はパン、チーズやハムをはさんだサンドイッチや、果物などを持参します。
りんご丸ごと(皮はむかず)、やバナナ1本も一緒に入れることが多いです。クッキー数枚が入っていることも。正直日本の給食に慣れている私達から見ると3時のおやつ?と思ってしまう内容です。
学校近くの売店では、軽食やフリット(日本でいうフライドポテト)を買うことができます。
または学校によっては、家に帰って食べるのもOKのところがあります。
親が在宅や、在宅勤務ができるなら、この選択肢もありですね。
入試が無いので、お受験産業がありません
受験産業が活発な日本。受験勉強のために塾に通った経験がある人も多いはずです。
しかし、オランダは中学、高校、大学の入試がありません。
進学はするのに、どういうことでしょうか?
オランダは12歳で将来の進路を考える節目が来ます。初等教育の8年生(日本の小学6年生)で受ける全国テスト、CITOテストというものがあり、そのテストの結果と普段の成績によって中等教育(日本の中学・高校)が決まります。オランダは中高一貫です。
全国共通テスト(CITO)の結果 と、普段の学校の成績
=>進路が決まります
中等教育は3つの進路に分かれます
・中等職業訓練教育(VMBO)・・・一般教育と職業教育、実際の企業研修もあり
・上級一般中等教育(HAVO)・・・大学進学や教師、医師、弁護士に向けた高度な専門教育
・大学進学教育(VWO)・・・大学進学の準備、研究大学(WO)へ進学する準備教育
3つの進路に分かれ、その後の高等教育(日本の短大や大学)も、中等教育(日本の中学・高校位)の成績やディプロマ取得により行ける進路が決まります。日本のように入試に合格すればどの大学にも入れるという仕組みではありません。
在学中に受ける全国テストや成績により次の進路が決まるので、入試用の対策=お受験の塾通いの必要がありません。
・CITOの全国共通テストは全国90%以上の学校が採用
・3年生からは毎年受ける
・科目は国語、算数、理科、社会など。
・5段階評価
高校や大学に入るための入試の勉強に時間を使うのではなく、学校で学んでいることに集中できるのはとても良いことだと、一人の親としては思います。入試で燃え尽きるのは本末転倒で、入った後に学校で学ぶ内容こそが重要だと思うからです。
12歳で自分の進路を(一旦)決めることになる?!
前項で、オランダは12歳で将来の進路を考える節目が来ることを書きました。
初等教育8年生で受ける全国テストCITOの結果と普段の成績で、中等教育(中学〜)の進路を決定します。
オランダ | 日本 | |
中等教育 (中学・高校) | 一貫(義務教育) | ・中学(義務教育) ・高校(任意) |
種類 | ・中等職業訓練教育(VMBO) ・上級一般中等教育(HAVO) ・大学進学教育(VWO) | ・中学校 ===== ・高校 ・高専 など |
ただ、この12歳の時で全てが決まるわけではなく、はじめの1-2年は「両方のコースを履修」できるブリッジという仕組みがあります。例えばHAVOとVWOの学校が併設されていて、自分の興味と能力によって両方のコースを履修することができます。2年が終わった段階で最終的にどのコースに進むかを決めます。
しかし小学校卒業時にある程度の進路を決め、14歳で再度その先を決める機会が訪れることに変わりはありません。
日本の場合は、大抵 高校卒業年の17歳になってはじめて、どの大学の学部に行くか?を決めます。オランダの学生と時期が大きく異なります。オランダの学生は日本の学生より3年ほど早い時期に自分の将来を見つめることになります。
ここでオランダの中等教育3種類を見てみましょう
VMBO、HAVO、VWOのまとめ↓
入学% | 位置付け | 将来の職業 | |
中等職業訓練教育(VMBO)/ 4年 | 60% | 中等職業教育(MBO)への準備 企業への実習もあり | IT、工業、経済、介護福祉など |
上級一般中等教育(HAVO)/ 5年 | 20% | 高等職業教育(HBO)への準備 | 教師、弁護士、看護師など |
大学進学教育(VWO)/ 6年 | 20% | 総合大学(WO)への準備 | 修士課程、そのほか |
日本では、大学進学をしていないと学歴が低いと見られがちですが、オランダは 「大学 or not」 の指標ではなく、上記3つの選択が等しく見られるのが特徴です。3つのどれに進学をしても学歴の格差がほぼないのが特徴です。子どもたちの能力に合った選択がされるので各自が自信を持った職業の選択が可能になります。
また、いつからでも選択の変更と常に学習の機会は開かれているので、VMBOを終了しその後に総合大学(WO)を目指すこともできます。VWOからエスカレートでWOに進学する人よりも年数はかかりますが、
VMBO(4年)→ 次にHAVOの3年に編入(2年)→ 次にVWOの5年に編入(2年)
合計最短8年をかけて総合大学(WO)に行くこともできます。
HAVOからも一旦高等職業教育(HBO)へ行ったのち、総合大学(WO)を目指すことも可能です。
12歳で一旦、自分の進路を決めるタイミングがきますが、その後も14歳やそれ以降の年齢からも選択肢を変えていけるのが大きな特徴です。
担任が複数で、教師はパートタイムもあり
最後は息抜きの内容をご紹介します!
現地校に通っている方に話を聞くと
月曜日はA先生、火曜日はB先生、、、というのが当たり前だそうです。
これ教科の先生ではなく「担任の先生」がです。
それゆえ今日の連絡を休みの担任に間違って送ってしまう、ということも発生するようですが。
オランダ | 日本 | |
担任 | ・複数人 ・パートタイムも | ・一人 ・専業 |
日本の担任は一人の常識に慣れているとこれまた驚きます。オランダで自由な働き方が学校現場でも採用されている好例です。ワークライフバランスが企業で導入されているなら、先生であっても同じです。そういう働き方が国全体で推進されていることがわかります。
また複数の先生がいることで、子どもを色々な側面から見てもらえます。
日本の学校だと、担任の先生から嫌われたら終わった〜みたいな感じになりますが、オランダだと担任が一人ではないから、一人の先生にコミットしなければならない心理的プレッシャーからも解放されそうです。
まとめ:自分の学力に合わせて学べるのがオランダ、将来の進路を早くから意識するのも特徴です
一覧のタイトルを振り返ってみます。
・義務教育期間は5歳〜18歳(16歳〜は部分的)
・小学1年生は4歳からスタート、4歳は任意参加
・日本人が驚く、落第も飛び級も普通なオランダ
・学区制が無い。人気校は抽選になる
・義務教育期間は 学費は無料
・初等教育(5〜12歳)は親の送り迎えが必須
・給食が無いので軽食を持参 または購入 または自宅へ
・入試が無いので、お受験産業がありません
・12歳で自分の進路を(一旦)決めることになる?!
・担任が複数で、教師はパートタイムもあり
4歳から入学するかしないか、通う小学校はどこにするのか、お昼はどうするのか、12歳で自分の将来を考える、などオランダの教育には一貫した「あなたはどうしたいのか?」「何を選択するのか?」を各自に委ねられているのがわかります。飛び級や落第も個人の能力を大切にその子を尊重しているからこそ現場に導入された仕組みだと理解できます。
オランダの子供たちの幸福度が高いのは、このように自分が一人の人間として尊重されているから。
教育の仕組みからもそれを感じることができ、それが大きな要因のように思います。
移住後にはまた学校選びの詳細など、オランダ教育に関する後日談を書きたいと思います^^
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